学園エヴァ
アスカとシンジの学期
「アスカおよばれをする」

こめどころ



ぜんざいと、おもちを毎日食べていたらふとってしまった。

あんこ、という珍妙な代物を日本に来るまで食べた事はなかった。面白い味だ。

だがその作り方を見ていたら2度と口にしない方がよさそうだと思った。

砂糖の量が半端でない。碇家では、シンジのパパの好みで、さらに砂糖を入れている。

ほとんど、溶量限界ぎりぎりじゃないの?それでも、ここの男どもはどちらかというと細身だ。

胃が悪い家系というわけでもないところをみると、吸収効率が非常に悪いのだろう。

飢饉になったら最初に死ぬタイプだわね。

ま、ユイ叔母様と私はこの妖艶さと美貌でなんとでもなるだろうけれど。

そうか!この家系の男達は、いくたびもの飢饉をこの手で乗り切ってきたに違いない。

まるで、シアノバクテリアね。太陽の光で生きる事を開発した最初のバクテリア。

その子孫がシンジ。


この想像はえらく私の気に入った。くすくす。

よりによってなんであんな男と、と思うくらい悪いけどシンジのパパは受けの悪そうな悪人面だ。

そのうえサングラスとひげ面で、300%は職務質問の回数を増やしている。


「問題ない。最近は決まった道しか歩かんから、声をかけられる回数もずっと減った。」


なんて話してたもんなー。決まった道を歩いていて、毎日不審尋問を受けるというのは・・・・・。

でも、おばさまに言わせると、うちの主人くらい可愛い人はいない。という。??????。

そりゃあ、世の中にはオパビニアやアノマロカリスをペットにして、可愛い可愛いといってる人もいるけどさ。

可愛いって言うのは、やっぱりシンジみたいに中性的な色白の愛らしい男の子で。きゃあきゃあ。

こいつだって、いつかは逞しく私を守ってくれるナイツになるわよ。きっと。多分ね。・・・なるかな。




今日はシンジのうちに夕食をおよばれした。

遊びにいってて、遅くなってご飯食べていきなさいって言われたのとは違うのよ。

お呼ばれなのよ、お呼ばれ。このちがい、わかるかなあ。

あまり日本では特別な感覚って無いのかなあ。夕食に正式に呼ばれるって言うのは、御両親が私の

事を、正式にとして、認めてくださったということなのよ。

え?スティディーって知らない?それはねえ、あなた、ちょっと問題あるわよ。

やはり友好国同士のメインな習慣くらいは知っておいた方がいいわよお。

あんただって、アメリカにふと留学したり、仕事上で赴任を命ぜられる事があるでしょうからね。

あのね、簡単に言えば、婚約の約束をしたみたいなものなのよ。

アメリカではいろいろな人とお付き合いして行くのはそんなに珍しい事じゃないの。

だけど、スティディーまで行った人はたいてい結婚するわね。

其処から先はもうほとんど他の人とはお付き合いはしないわ。

まあ、それほど大事って事なのよ。私が特に今日気合いが入っているわけがわかるでしょう?

学校から帰ってきてお風呂に3回も入って、歯も3回磨いて、念入りにお化粧して、お化粧と

言っても、学生らしく薄い上品なお化粧にしたの。

それから取って置きのシルクの淡いクリーム色のワンピースを着て、白いレースのカーディガンを着たわ。

ちょっと昔風の格好ですって?さすがにね、こういう時は肩を出した服なんかは着ないわけよ。

まあ、堅信礼みたいなものだわね。え?堅信礼を知らない?そうか、日本人は仏教徒だっけ?

まあ、宗教上の大事な儀式みたいなものと思ってくれればいいわ。自らの意思でクリスチャンで

あることを決定する事なんだけどね、そういう時は肌を出さない清純派のかっこうをするわけよ。

スティディーな関係を結ぶ事も同じようなものね。


うれしくてうれしくて、朝からずっと心の中でスキップしてたの。

でも、シンジに悟られるのはいや。


「ま、なってあげてもいいわね。」


こういう感じをかもし出したいたいわけよ。

男の子って言うのは自分のものになったと思ったとたん偉そうになるからって、ママに教わったのよ。

日本でも言うでしょう?

ふった酒場に武者はやらない・・・なんだっけ、そうそう餌はやらない・・・。

釣った魚に餌はやらない!そうだ!



とにかく約束の6時になって、私はシンジがエスコートに来るのをいまかいまかと待っていたわけ。







「アスカお呼ばれをする」途中のお休みです。



わくわく待ってるアスカ。初めて正式のおよばれをするわけですから、

しょっちゅう行ってる碇くんのうちでもどきどきですね。

ところがところが・・・・。さあ、先をお読みください。





6時を20分回った。

いらいらいらいらいらいらいら。

るるるるるるる・・・・・。

電話が鳴った。

ちゃっ。


「はい、ラングレーです。シンジィ?何か御用ですか?」

「どうしたのさ。今日、うちに夕食食べに来るっていってたじゃないか。」

「ああ、あれね。知らんわ。わすれたっ!!シンジのバカッ!!」

「え、ちょ、ちょっと・・・。」


叩き付けるように電話を切った。


「なんだい、アスカのやつ。」


シンジはさすがに怒ってドカドカと足音を荒げて居間に入っていった。

そこへ、座敷に料理を運んだりしていたユイがシンジに気づいて入ってきた。


「あら、シンちゃん。こんなとこでなにしてるの?」

「あ、かあさん。今日アスカ急に来られなくなったみたいだよ。」

「あら、私が昨日確認をした時にはそんな事言ってなかったのに。」

「しらないよ。まったくいいかげんわがままなんだから!」

「それ、迎えにいった時にいわれたの?」

「いや?いま電話をしたんだ。遅いからさ。」


ユイの顔が怖い顔になった。


「シンジ、アスカちゃんの国ではね、お招きしたらお迎えにいくものなのよ。

特に男の子が女の子をお招きした時にはね。」

「え、えーっ。そんな事までしなきゃいけないの?」

「シンジにとってのアスカちゃんはその程度の女の子なのかしら。母さんそう思ってなかったんだけど。」


シンジは思いきりうろたえていた。


「ぼ、僕すぐに迎えにいってくるよ。」


父さんがのっそりでてきた。


「これを使え、シンジ。」


交通機関ゴールドフリーパス。これで地の果てまでも行けるやつだ。


「ありがとう!父さん!!」


シンジは大通りまで走り出て、タクシーを捕まえる。アスカのうちは学校を挟んでちょうど学区の反対側だ。

タクシーを飛び降りて、マンションの7Fまで一気に駆け上がった。息を切らせてドアチャイムを押した。

何回か鳴らすと、チェーンをはずす音がして、少しだけドアが開いた。


「なによ。」

「ごめんよ、アスカ。僕知らなかったんだ。男の子が迎えに来るものだって。」

「ふん・・・。そうなの。日本にはそういう習慣が無いの。でもさ・・・。」


アスカがいつもより少し低い声で言った。


「6時って、もう夕方よね。日だって陰ってくる時間じゃない。」

「う、うん・・・。」


そうか。習慣がどうかって事じゃないよね。シンジはやっとユイが怖い顔をしていたわけがわかった。

僕に足りなかったのは、アスカの心を思いやる気持ちと、ぼく自身がもっと考えなきゃいけない事だったんだ。

一人で、夕方の道を歩くのは寂しい。

ぼくが迎えに来て、話したりしながら歩いてくれば、それだけで2人にとって楽しい道。

ただでさえアスカは、知らない国に来て不安なんだ。僕がもっと気を遣わなきゃいけなかった。

いや、そんなことじゃない。

アスカは僕にこう言ってるんだ、心の中で。



「私は、碇くんにとって大切な女の子なんですか?」



僕は、もっとアスカのことを真剣に考えなきゃいけなかったんだ。

好きだとか言うだけで、へらへらしてちゃいけなかった。


アスカの事を自分の事として想像するのを怠けてた。




「ごめんよ、アスカ。」



「随分、真剣に考えてくれたのね。」




ゆっくりと、アスカは答えた。

シンジは自分では気づかなかったが随分長く玄関先で立ち尽くしていた。

もう真っ暗になっていた。

黙って、唇をかみながら考えているシンジの姿はアスカに誠意を伝えるのに十分役立ったようだ。


アスカは、靴を履き直すと薄手のコートを手に持ってドアから外へ出た。

淡いクリーム色のワンピースに、白のカーディガン。

風が、アスカのワンピースを揺らし、髪を乱した。


それが、シンジの気持ちを揺らした。



「アスカ。その・・。」


「え?」



奇麗だよ、と言おうと思ったけれど、声が出なかった。


「いや、なんでもないんだ。」


でも、今夜の君の姿をきっと忘れる事はないよ。シンジは心の中で思った。


「どうしたのよ、変なやつ。」


そう言ってアスカはにっこりと微笑んだ。

身体中が熱くなる。それほど奇麗な、煌くような笑顔。

思わず、シンジは手を出していた。

アスカは、目を丸くしてその手を見た。


「あ、ありがとう。」


自分の手を重ねる。温かかった。


二人は手をつないでマンションのエントランスを出た。




「碇シンジ様と、アスカラングレー様でいらっしゃいますか。」


呼び止められて振り返った。

ぴかぴかに磨き上げられた、最高級リムジンがそこに停まっていた。


「碇ゲンドウ様より、お迎えに伺って待つように言いつけられてまいりました。


促されるまま、アスカとシンジはそれに乗り込んだ。


「小父様もなかなかやるわね。さすがはシンジのお父様だけあるわ。」

「おやじも何を考えてるんだか。」


こころのなかで、父さん、ありがとう!とつぶやく。


ほどなく、車は碇家の玄関に滑り込んだ。

ユイが迎えに出てきた。

笑い声と笑顔。

玄関の中にゲンドウの声もする。


「今日は、お招き頂いてありがとうございます。遅くなって申し訳ございませんでした。」

「さあ、挨拶は後にして、上がって頂戴。お母さん腕によりを掛けてごちそうつくったわよ!」


皆が、家の中に入って行き、背の高いドアが閉じられた。





寒さも風も穏やかな、星の奇麗な夜。

このうちが幸せに包まれているのがわかるような、明るい照明がどの窓からも溢れていた。






アスカとシンジの3学期:「アスカお呼ばれをする」/おしまい。



 

 

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