朝 まだきに

こめどころ



夜。

置き時計の秒針が、はるかな遠くで、

終わってしまった音楽、枯れてしまった花束を抱えて歩いている人々の

冷たい足音を真似ている。


これでいいのか!

これでいいのか!

と真似ている。


これでいいのか!

その音が、私の眠りかけた瞼を苛立たしく叩く。いつまでも、いつまでも。



寝付きの悪い鳥が木陰で羽根をばたつかせるように、うっすらと目を開ける。

眠気が染み込んだような濃紺の夜空にかかっている銀色の弓月。

それがひどく眩しく感じられてまた瞼を閉じる。

身体中の神経のあちこちに点された灯が苛立たしく、そのくせひどくだるくて眠い。


つかってしまった時は購われる事が無い。

実現しなかった事は抽象。

永久の可能性を残すのは、思惑の世界にだけ。

実現した事と、実現しなかった事。

両者が今ここに、私という一点の現在を指している。



明日こそは。

わたしの言うべき言葉を。この想いを、伝える事無く霧散させぬように。

明日こそは。

この目に私の想いを込めて見詰める事が出来るように。

心に祈らずにいられない。



いつのまにか飛んで行った眠気が、木の梢でデッポウ、デッポウと、鳴いている。

しらみ始める夜空。

いつも目が覚める時間。

壁の向こうにいる私の想い人。そんな事を欠けら程も思った事なく、穏やかに寝ている事だろう。



血にまみれた無数の片腕が諸刃の剣を掴んだまま流れて行く。

怨嗟と呪詛と青ざめた顔が流れていく。

日常は逃げて行く自分との戦い。想いは自分を抑制えつける戦い。


優しかった少年の指は逞しい男の匂いがする。濡れた枯草の香りがする。

ブロンズの馬の脚の感触がする。日向の枝の感触がする。

指は鋭い刃物で、硬い鉛筆を尖らせる。柔らかい果実を握り潰す。

私の髪を梳いてくれる。私の髪をもつれさせる。

そして私の眠りを妨げるようになる。



半身を起こし身体を抱きしめる。冷たい私の皮膚。なのに身体の中は熱い。

私の想いが滾っているというのだろうか。

思わず頬に上がる熱気。


そんなにも、せっぱ詰まった想いだったろうか。

これは呪詛だ。駆けて駆けて、行き着くところまで行かないと気が済まない私の心への。

それは甘い呪詛。




起き出した彼が、洗面台に立って行ったのが分かる。

私は操られるようにベッドから降りる。



静かに後ろに立っても彼は気づかない。


そっと、彼の背中に私は頬を摺り寄せる。


その、暖かい背中。













「あさまだきにめざめ」終




あとがき:

アスカ「こ、これって・・・。」
まこと「うわー、情熱的ですね。アスカ様。」
アスカ「違うわよ、私じゃないわよ。いや〜ん!」
まこと「いや〜んて・・・。い、今言ったのア、アスカ様?
そうか・・・、こういう事もあったんですねえ。」

アスカ「(キッ!)だ、誰なのよ、こんなの書いたのはっ!」
まこと「さあ。朝起きたら、届いていたので、誰が書いたのかは。」
アスカ「あんたのとこでは、どこの誰が書いたと知れぬ作品も載せるんかいっ!」
まこと「名前で載せるわけじゃありませんからねぇ。」
アスカ「ちょっと、原稿を見せなさいよっ!」
まこと「あっ、取材元の秘匿義務がっ!」
アスカ「うるさい!(ばさばさ・・)この字は・・・。(めらめら)あいつはどこ。」
まこと「はっ!話せば長い事ながら昔々あるところに。。。」
アスカ「簡潔にっ!(ばきぼき)」
まこと「自宅です。」

起動する弐号機。(S2機関搭載型)
まこと「た、大変な事になった。どうしよう・・・・そうだ、逃げよう。」
逃走する誠。コメドコロの運命やいかに!

続く。(つづくかっ!)



Feb/27/2000

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