ずだだだだだあああん。
派手な音がテラスハウスじゅうに響き渡った。
僕等がいた
No.1 〜愛の巣のなか〜こめどころ
ベッドにうつ伏せになっているアスカ。たったいま、階段の下からシンジにおぶわれて戻ってきた所である。
「あああ、痛いよう〜〜〜。」
「まったくおっちょこちょいなんだから。」
苦笑いするシンジ。
寝ぼけまなこで新聞を取りに行こうとしたアスカが階段を踏み外したのだ。
二人の寝室。大きな高窓つきのサッシからレースのカーテンを通して燦燦と
朝日が射し込んでくる。大きな花瓶には、こぼれそうなほどの花が生けられている。
「だって、平らじゃないマンションに住むのははじめてなんだもん。間取りも違うし。
ドイツの研究施設はみんな平屋の一戸建てだったし。」
「わかったわかった。さあ、湿布貼ってあげるから、おしりをだして。」
「え…いいよ、自分でやる。」
「だめだめ、後ろ側には手が届かないよ。」
頬を真っ赤にしてパジャマのズボンを寝たまま、もじもじと脱ぐアスカ。
「それじゃ、貼れないでしょ、アスカ。」
「いやーん。これ以上はやっぱりだめだよう。」
くすくす笑いをしながら、かわいいレースの入った下着に手をかけるシンジ。
「ほら、見ないから腰を上げて。ひどいアオジになっちゃうよ。」
「ぜったいみちゃだめだよう?」
「うんうん、ほら、目をつぶったよ。」
わずかに腰を上げるアスカ。
腿の半分くらいまで下着をおろすと、ぷりん!とピンクのお尻が顔を出す。
「やーん!」
枕に真っ赤な顔をうずめるアスカ。
ぺりぺり…湿布のシ−トをはがすシンジ。
「ここが痛い?」
ぷにっと、お尻を押す。
「・・ううん、そこは平気。」
ふにっ。
「そこも大丈夫。」
ぷにぷにっ。あ、ここ熱を持ってるぞ…。
「あっ、つつつ。そこみたい。」
すかさず、湿布をペタッ!
瞬間、驚愕の表情をうかべるアスカ。
「はあうっ!(ぱくぱく)」
口を大きく開けて、声がでない。
「く、く、く…う、う、う。つ、つめたああい!」
手を伸ばして虚空をつかんだ後、がくっ、と手がベッドの上に落ちる。
2枚目。
「ぎゃうううう ――――――っ。」
3枚目
「あひいいいいい ―――――――っ。」
貼るたびに叫び声をあげるアスカ。
ショーツを元に戻して、パジャマズボンをはき直させたシンジ。
「じゃ、おとなしくしてるんだよ、あとでご飯持ってくるからね。」
涙目になっているアスカに、やはり涙目になっているシンジは声をかけ下に降りていった。
同じ涙目でもこっちは笑いをこらえた為だが…。
「ひどい目にあった…。」
つぶやくアスカ。テレビが目に入る。
退屈なので、何とかしてつけたい、と思う。
手…は、とても届かない。
枕元に立てかけてあるシンジのセロが目に入る。
弓には何とか手が届きそうだ。よいしょ、もう少し。あともう少し…。
スクランブルエッグを作っているシンジの頭の上で、
ズド ―――――――――― ン ! !
なにか大きな物が落ちる音がした。
リモコンを手に握らされているアスカ。
腰からお尻にかけて水枕がガムテープで貼り付けられている。
大変情けない格好である。
「と、とにかくリモコンは手に入った訳だから…。」
ぷち。 ・・・・シーン。
「あれ?何よう、テレビの電源が入ってないじゃないの!」
暫く考えるアスカ。その後少しづつ身体をにじりだして、ずるずるとベッドから這い出す。
まるで、恐怖のヘビ少女である。ひじだけを使って身体を引きずれば確かに腰は痛くないが。
にょろにょろ、ずるずる…。にょろにょろ、ずるずる…。にょろにょろ、ずるずる…。
誰かが見ていればきっと大笑いしただろう。
「アスカー、食事ができたよ。」
ドアを開けて入ってくるシンジ。ほかほかのスープと、パンとタマゴ料理とほうれん草のバター
炒め。ソーセージにハムと、ポテトフライとミルクティーがお盆に満載されている。足元にいる
ヘビ少女に気づくはずもなかった。
ガシッ!
「え?」
ガチャーン!ばしゃぁ、ガタガタン。べちゃっ。
「……………!!!」
「あちちちちちちち!ひいいいい!」
部屋中を走り回るアスカ。
花瓶をとっさに掴むシンジ。
駆け回るアスカの髪を掴んでベッドに引き倒し、大量の水を背中から浴びせ掛けます。
「ぎゃああああああああっ!!!!!!」
響き渡るアスカの悲鳴! ……ちーん! V ゜_
゜V …… びちょびちょ
その後アスカはシンジに強引に裸に剥かれて、シャワールームに連行され、
やけどで赤くなった部分に冷たい水をザーザーかけられた。
悲鳴を上げても、シンジに真剣な顔で、
「だめっ!跡にでもなったらどうするつもりなんだっ
!! もうずっと水着なんかも着れなくなっちゃうんだよっ!」
と、どなられると、ぐうの音も出ない上、なんだかうれしくなってにまにまと顔が崩れてしまうアスカであった。
身体が冷え切ってがちがちと歯の根も合わないくらいになってからシンジはやっと満足して、
アスカをタオルでごしごしと拭き、それから大きなじぶんのTシャツを着せて、毛布を2枚もまきつけたあと、
髪の毛もふいて、ドライヤーでふかふかになるまで乾かした。
腰は痛いは、背中や横腹はヒリヒリするは、何にもいい事無しのアスカだったが、こころは充実してぽかぽかしていた。
ついでに髪の毛もたんぽぽの綿毛のようにふわふわである。
「ヤッパリ日本に帰ってきて良かったぁ…。」
アスカは、子供のようなぽわぽわのタンポポ頭をして、心底そう思っていた。
愛する人が身近にいて自分をしかったり、笑ったり、心配してくれたり、めんどうを見てくれたりする事は、なんて素敵な事なんだろう。
軽い食事をそのままのかっこうで、小鳥の雛のように食べさせてもらったアスカは、またシンジに抱きかかえられて2階に運ばれた。
ベッドマットはびしょびしょになってしまったので、ベランダに干され、シンジが使っていた和室に布団を敷き、そこに寝かされた。
「これならもう落ちないね。」
シンジがにこりと笑う。
それはそうだわね。ここにミサトがいなくて良かった。
突拍子もない事を考えて、コロコロと自分で笑うアスカ。
お古のシンジのパジャマを着て、シンジの使っていた布団に寝るのがうれしかった。
(わーい!シンジのお古だあ。)
やけどでヒリヒリしている所にはリバノール溶液を浸したガーゼを貼り付ける。
そのうえに油紙をおいて、密封する。
腰と、お尻の、ひどく打ちつけた所には、インドメサシンのゲルを塗り込む。
少し古い処置だし手間がかかるのだが、それを惜しむシンジではなかった。
「うーん、今日はどこかへ連れていってもらおうと思っていたけれど、こうして看病してもらって
いるのもいいなあ。」
などと、不遜な事を考えているアスカ。
…モットコノシアワセヲアジワイタイ… 悪魔のささやき。
「フジりんごのすったのが食べたい。」
「1990年代のアイルランドの歌手でENYAっていう人のCDがすぐに聴きたい。」
「アヲハタの桃缶が欲しい。」
「Earl Grey DarjeelingかQueen's Hope をアイスティーにしたやつを飲ませて!」
「今日発売の少年エースが読みたい。」
「スイカが食べたくなった。新千曳屋のじゃなきゃだめだからね。」
「晩御飯は貝殻の形のマカロニとABCの形のマカロニが入ったグラタンじゃなきゃいやっ。」
我が侭の言いたい放題。…よくもまあ。
そのたびにシンジは自転車をこいで商店街に走り、銀座だ新宿だ荻窪だと車で走り回る。
そして、何とか見つけて、にこにこと帰ってくるのだった。
その探してる間にも寂しいアスカは携帯電話を握り締めて際限無く、しゃべるしゃべる…。
夜12時。
ふらふらになったシンジが、今日何回目かの湿布の張り替えを終わって、
アスカの隣に布団を敷き始めた。
「シンジィ…今日はゴメンね。わたし…少し悪乗りしすぎたと思う。」
「いいんだよ、アスカ。ぼくもアスカが帰ってきたんだなあっていう、実感が味わえてうれしかったよ。」
「それってなんか ・・・・・・・・。」
複雑な顔のアスカ。
「でもね、もうひとつだけお願いがあるの。」
「いいよ。なんでも。」
「あの、あのさ。抱っこして寝て欲しいんだ。」
今更のようにぽっと頬を染めて頼むアスカ。
「きのうも、そうしたでしょう?」
「ううん、違うの。きょうはね、後ろから抱いて欲しいの。」
シンジは、まくらをもってアスカの布団に一緒にもぐると、彼女の腰から背中ににおなかをぴったりとくっつけ、
右手をアスカの腕枕に提供し、左手で布団の上からアスカごと抱きしめ、二人でまるまった。
「背中があったかい。これがずうっと欲しかったの。ずうっと。」
背中が温かいのってなんていいんだろう。
密着した感触が幸せを連れてくるみたい。
ドイツにいた間、どんなに温かくして寝ていてもスースーとした寂しさがどこかにあったのは、これ。
シンジに後ろからぴったりくっついてもらって抱きかかえられて眠る幸せ。
その夜、2人の住む建物全体がピンク色に怪しく輝いているのを見た、という人は多い。
そして、ひどく寝苦しい夜を過ごした人が多かったとも聞く。
VOL.1 〜愛の巣のなか〜
あとがき、のようなもの。
ラブラブものを書いてみました。
アスカさま:「ちょほいとまちなは、兄ちゃん。」
こめどころ:「ぎくっ、こ、この声はみやむー、じゃなくてアスカさま。」
アスカさま:「よくもまあ好き放題かいてくれたもんねえ。」
こめどころ:「い、いや。これも読者サービスというやつでして。」
アスカさま:「わたしはね、いくらなんでも人前でパンツ脱いだりしたくないっていってるの。わ・か・る?」(ごりごりごり…)
こめどころ:「ひいいい。ブロック塀に頭こすり付けるのは勘弁して下さいいい。」
アスカさま:「ベッドから落ちたり、階段から落ちたりっていうみえみえの大ボケはミサトにでもまかしときゃあいいのよ。」
こめどころ:「で、でもシンジ君にいっぱい甘えられて良かったでしょ?」
アスカさま:「バ、馬鹿シンジに優しくしてもらったって、うっとうしいだけよ。(ぽぽっ)」
こめどころ:「あっ、やーい、赤くなってる、赤くなってる。うれしかったくせにー。」
アスカさま:「う、うるさいわねっ!つまんないこというと最期にゃぶちのめすわよっ!」
笊∀へ∀#笊
こめどころ:「やーい、やーい!アッちゃんとシンちゃんはあっちっちーっ!!」
ニニニニ⊃∽∽?==笊∀へ∀#笊 ロンギヌスの槍を持ち出すアスカ
こめどころ:「ひいいいいいいいい。」
誠:「どうせ泣かされるんだから、突っ張るのやめときゃいいのに…。無理しちゃって。」
シンジ:「僕なんか、こき使われて熱出ちゃって、39℃もあるんですよ。げほげほ。」
誠:「コメさん、足、震えてるぜ。」
アスカさま:「あっ、シンジィー寝てなきゃだめじゃない。いまこの馬鹿コメをサクサクっと成敗してすぐ帰るからね。あっ、逃げたっ。」
必死で逃走するこめどころ。ロンギヌスの槍を投げつけるアスカさま。
ひゅるるるるうるるう。ざく。
こめどころ:「ぎええええええええ。」
誠:「南無阿弥陀仏・・・・。」
Feb.1.2000 加筆再録