スーパーウーマン、アスカの娘、ツバサ=フィオ=イカリ。今日も可愛くて明るいアスカママと一緒でご機嫌。
優しくて強いパパ、碇シンジは、娘には大甘の子煩悩。素敵なファミリー碇一家はどこでも羨望の的!
しかし、この一家には大きな秘密が隠されていたのです・・・。
そう、この家の2人の女性は、娘もママも、天才だったのです。(笑)
アスカ!25時
第弐話 後編 -魔女達が扉をたたく-
こめどころ
アスカは信用金庫の隣のビルを6階まで駆け上がっって屋上に出た。
そして、3mほど離れた信用金庫の屋上にひらりと飛び移った。
鍵がかかっているが、ヘヤピン一本で10秒で開けてしまう。特捜の捜査官には簡単な事だ。
2階まですたすたすたと静かに駆け下りると、異様な緊迫感と共に女の子達のすすり泣きの声が聞こえてきた。
アスカが屋内に侵入したころ、ツバサは駅前派出所に着いていた。
「ツバサちゃん、急いでどこにいくの?」
息を弾ませて走ってきたツバサに知り合いの巡査部長が声を掛ける。
「部長さん、信用金庫の様子がおかしいの。ママが部長さんに知らせてって言って中に入ったの。」
「えっ、通り沿いの東中野信用金庫かい?私に知らせてって?」
土方マコト巡査部長は猛烈に感動した。憧れのアスカ刑事の直接のご指名である!
「わかりました!私、命を懸けていかせていただきます!!」
新人のころ上司に言われた、あの方の動く時は派出所メンバー総動員という言葉が脳裏に甦る。
(桜が一番好き外伝2「やっぱり幸せアスカちゃん」参照のこと。)(^^)
「ツバサ、パパも呼んでくる!」
「はっ!宜しくお願いします。おいっ!非番のやつを呼び出せ!残りのものは楯とヘルメット装備で
俺に続けっ!」
自転車に飛び乗って走り出す土方マコト巡査部長(30)。若い連中が慌てて後を追う。
ドアにぴったりと身体を寄せる。女の子達がすすり泣いている。
「しずかにしろ。2度とは言わんぞ。」
野太い声が周りを圧するように言う。しん・・・と店内が静まり返った。
警備員室は・・・、あった! 走り寄る。
「うっ!」
背広の職員が2人、警備員が1人。血だまりの中に倒れている。まったく躊躇った跡がない。
ビデオのスイッチを入れる。職員は全員床に腹ばいになっている。だが犯人は写っていない。
この犯人達はおそらく、ビデオの角度を動かしたら気づいてしまうだろう。第2、第3のスイッチを入れる。
犯人らしき男達は3人・・・しかし完全に把握は出来ない。
裏口をまず封じよう。アスカは鍵を掛けた後、ドアのノブをはずし、中のスプリングを抜きとった。
引きドアだから、体当たりをしても開かない。外からは突入できる。こんな事でも時間稼ぎにはなるだろう。
外線電話はすべてカットされている。セキュリティにも何らかの仕掛けをしたらしい。携帯も通じない。
(「でもおかしいな。普通銀行強盗は時間との勝負なのに、なぜゆっくり時間をかけているんだろう。」)
アスカの頭に一つの疑問が浮かぶ。孤立無援の白昼の銀行強盗・・・。成功させるには・・・。
ドンドンドンドン!
必死でドアをたたくツバサ。(まだ、インターホンには手が届かないのだ。)
「パパー!パパ起きてえっ!」
しかし、シンジは出てこない。よほどぐっすり寝ているのだろう。
上下と両隣は両方とも空き部屋。個室ごとに張り出した壁があるのでベランダ伝いにも移動は出来ない。
あいにく管理人も留守。電話はでかけるときにパパが眠れるようにと、切ってしまった。
ツバサは、あきらめて再び信用金庫に向かって走り出した。白墨で書いたメッセージを床に残して。
「中野の本署に連絡は入れたか!」
土方マコト巡査部長が叫ぶ。
「はっ!既に向こうを出た頃です。特捜にもアスカ警部が関わっていると言う連絡が入った頃かと!」
「よし!上下線の交通遮断準備。くれぐれも騒ぎにしないようにな。派出所のパトカーは信金から見えんところに置け。
スラグ弾や、何かを持ってきてあるか。」
「もちろんであります。」
「催涙弾を装填してとなりのビルの屋上に一人待機。制動鎮圧用の小物も持っていけ。警部が使用するかも知れん。」
店内のアスカ。犯人達は動きがない。時計は4時に・・・5,6秒前。
パーン!!
突然銃声が轟く。店内からは悲鳴が上がる。続けて機関銃の音、ガラスが割れる音が響く。
「なめるなよ!撃たないと思ったら大間違いだぞ!!」
先ほどの静かな抑圧の聞いた声とはまったく違う声だ。
「えっ!」
予想外の動きにアスカは思わず声ををもらした。今のところ全ては潜行して犯罪が進められている。
うまくやれば気づかれぬままに事が成功したかもしれない。なぜ騒ぎを起こす必要がある。
(「やはり、何かの陽動?」)
しかし、パトカーのサイレンは5分が過ぎても聞こえてこない。店内の犯人にはむしろその事に動揺が走る。
「なぜだ!なぜ警察が来ない。」
この時点で既に武装警官20人が屋上で待機している。バールと、大金槌を抱えた警官も書く窓の下に張りついている。
しかし店内からはまったく見えない。
「おいっ、吉田!おまえ上の窓から様子を見てこい。」
テレビを見てもさっぱり臨時ニュースが流れない事に焦った男達は一人を偵察に出す。中から飛び出してきた男を、
あっという間に組み敷いたアスカ。ゴリゴリと頭に銃をこすり付ける。
「特捜よ!店内の犯人は何人!答えなさい!」
「5,5人だ。」
当て身を食らわせて警備室に放りこむ。その時、数人の武装警官がゆっくりと階段を降りてきた。
アスカに気づいて合図をする。
「中野署のものです。」
「ご苦労様。中には5人残ってるわ。警察が来ないと言ってうろたえている。」
「はあ?変な連中ですな。」
「どうも陽動臭いのよ。どういうことかしら・・・・。」
「広域警察の方も外にいらしております。」
「はやいわね。」
「既に包囲は十分に。突入も出来ます。」
「わかった。あとよろしく。警備室に犯人一人ほうり込んである。それと・・・仏さんが3人。」
アスカは再び屋上へ出、隣のビルを駆け下りた。
目の前に青葉と日向の、兄ちゃんコンビがいる。
「お!アスカ、中はどんな様子だ?」
「なんか変なのよ。」
「ママ!」
「ツバサ!駄目じゃないこんな危ないとこへきちゃ。パパはどうしたの?」
「パパはまだお昼寝なの。」
「あら、困ったわね。シンジは寝付きが深いからなあ。」
「おい!突入を決めたらしいぞ。すぐ始めるそうだ。」
この時代、犯罪は増加一方であった。長引かせるとまずいと言う事、抑制力の強さを見せ付けるために
強硬手段が一般的であり、犯罪は割に合わないと言う事を徹底させる方針が採られている。
今回の場合、シロウトの軽武器による単純強盗とみたのだろう。確かに表面的にはそうなのだが。
「ママ、突入するの?」
アスカのスカートをツバサが引っ張る。
「そうみたいねえ。まあ、たいした武器は持ってないんだけど。」
「あのね、向かい側に運送屋さんあるでしょ、あそこに戦車が隠れてるよ。」
「なああんですってええええええっ!!!!」
とびあがったアスカが突入中止を指示しようとしたとたん、現場の指揮官は叫んでいた。
「全部隊、突入せよ!」
窓の格子をバールでへし折り、窓を叩き割る。裏口を破って突入。忍び寄っていた階段下の部隊が天井に向けて威嚇射撃をしながら、
催涙ガス弾を次々と店内に撃ち込む。物陰に隠れていたパワーシャベルが正面のシャッターを引きむしる。
打ち返してくる店内の賊。煙に紛れて次々と店員を窓から屋外に投げ出す。機関銃の乱射音。
次の瞬間、向かいの運送屋のシャッターがめりめりと音を立てて歪んだかと思うと、中から戦車が現れた。
「げげーっ!!」
その場にいた全ての警官が青くなった、ここで戦車砲を発砲されたら大惨事になる。
キュイイイイーン!!
甲高い金属音を立てて砲塔が回転する。
次の瞬間、
ドドドドーン!
大爆発を起こす戦車。その大音響が東中野中に轟く。
砲身が裂け、砲塔が外れる。もうもうと上がる真っ黒な煙。
真っ黒にすすけた男達が転がり出してくる。
「あああ、」
呆然とするアスカ。はっとしてツバサを振り返る。
「あんたね。なんてことすんのよ〜。」
「わたしなにもしらなーい。」
うやむやのうちに毒気の抜けた犯人達は全員逮捕となった。
「じゃあ、私たち買い物があるから。」
「さよなら、部長さん、青葉さん、日向さーん!」
小さな手を振って愛想を振り撒くツバサちゃん(5歳)。
鰆とビールと枝豆を買って帰る2人。
「さて、ツバサなにしたのか白状してもらうわよ。」
「あのね、パパが起きないから戻ろうとして、裏道を抜けていくとあそこの運送屋さんの裏に出るのよ。そこでね。」
(「変な道ばっかり良く知ってるからなあこの子。」)
「裏口から入って、シャッターの扉を抜けるのが近道なの!」
嬉しそうに言う。
「そしたらね、戦車があって男達が乗り込むとこだったの。乗っちゃたらもう戦車からは外って見えないでしょ。
載せきれなかったらしい弾があったからさあ。そいつを逆さまにして砲塔に入れちゃった。丁度後ろ向きだったから簡単だったよ。」
「簡単とかそういう問題じゃない・・・。」
頭を抱えるアスカ。流石は自分の子だとは思うけど。
その頃、シンジはやっと目を覚まして大あくびをしていた。
♪ぴろりんぽろりん♪
チャイムと一緒にドアをどんどんとノックする音が聞こえた。
「パパー、あけてちょうだい!」
アスカ!25時 第弐話 後編 おしまい
Feb.4.2000