スーパーウーマン、アスカの娘、ツバサ=フィオ=イカリ。
今日も可愛くて明るいアスカママと一緒でご機嫌。
優しくて強いパパ、碇シンジは、娘には大甘の子煩悩。
素敵なファミリー碇一家はどこでも羨望の的!
しかし、この一家には大きな秘密が隠されていたのです・・・。
そう、この家の2人の女性は、娘もママも、天才だったのです。(笑)
アスカ!25時
第四話 中編 -蒸発した水は雨になって戻る-
こめどころ
「なによっ!こいつら!」
左右から大型トレーラーが幅寄せしてくる。前を走る大型パネルトラックもスピードを落としてくる。
アスカが急ブレーキをかけようと後ろを確認すると、真後ろを走っていた数台の車が展開し、
それぞれ後続車を断った上で、こちらに向けて機関銃のねらいを定めている。
「くそっ!!」
自分一人ならアクロバティックな運転が出来ても、ツバサがいて、おまけにサイドカーでは・・・。
車群のさらに後ろにいる大型トレーラーがパッシングをしている。
前のトラックの荷台の扉が開き、板が下がってくる。盛んに手招きしている。乗り込めというのか。
「えー、そんな事危なくてできなーい、といってもだめでしょうね。」
「撃たれて怪我したら馬鹿らしいからそのままいきましょ、ママ。」
「ま、なんとかなるか。」
バウ、バウウウウウッ!
アスカは、エンジンを吹かすと、いっきに降ろされた木の板を駆けあがった。
乗り込みついでにペイント弾を道に転がす。アスカ達を積み込んだトラックが速度を上げる。
一団が通り過ぎた後で、後続の車がプチっとペイント弾を踏み潰す。
ここで攫われた事がすぐに分かるように。
ドアが閉められ、二人は連れ去られた。
アスカとツバサが連れ去られたのを特捜がつかんだのはそれから1時間ほどしてからだった。
すぐさま関東一円に警戒線が引かれ、主要道路の封鎖が行われた。
だが、大方の予想通り何の手がかりもつかめない。16時間後になってアスカの所属する広域警察に
新宿署から、保育園の近くに大型タンクローリー、トレーラー、トラックなど数台に、誘拐と同じ時刻ごろ、
駐車違反の警告文書を貼り付けたという報告が入ってきた。
聞き込みと、TVのニュースなどへ寄せられた情報から、新早稲田通り中落合付近で数台の大型トレーラーが、
併走して渋滞が生じた事が確認された。
すぐさま現場の調査が行われた所、ピンクのマーカーペイント弾が潰されて発見された。
車両の特定は意外と簡単だった。特殊な多段速車両に使用されるタイヤの跡だったからだ。車の持ち主は
杉並区善福寺の山岳植林会社のものだった。
「ああ、1時過ぎくらいに蕎麦屋からでたら、でかいトラックやトレーラーが上下3車線ずつある新早稲田通りを、
いーっぱいにふさいで走っててな、急いでたんで困ったんだが、ものの2,3分もしないうちにまたバラケてたんで
少し渋滞した程度だったな。先頭はな。え?赤いサイドカー?BMWの?うーん、そいつは見なかったなあ。うん。
特徴?トレーラーの?新潟ナンバーだったな。うん、もう一台は長崎ナンバー。新潟と長崎で同じ会社の塗装だったから
珍しいと思って覚えてたんだ。なんか事故でもあったの?ねえ、教えてくださいよ。秘密主義はよくないっすよ!!」
「という事だったです。」
捜査官がミサトに報告している。ミサトは其処にいた他の捜査官に話し掛けるともなく話し掛けた。
「ふーん、長崎と新潟ねえ。それってなんとなく東中野のあれと似てない?」
「あのときも長崎でしたけどね。ナンバー。」
「でも、少しは気を遣うんじゃない?そういう時って。」
「其処が似てるって事よ。陽動を必ず組んでおく。意外とそんなTVドラマみたいな事って、無視しちゃうもんでしょ。」
「それで、まさかまさかで、さんざん振り回された事件って多いのよね。表向きは発表されないけどー。」
そこに、日向がドアを開けて入ってきた。
「葛城警視正。ペイント弾がまたでました。沼津の榎宮です。科学特捜部の赤木博士の同一検定で確認済です。」
「やっぱり長崎、新潟はガセね。」
葛城は、その場でヘリコプターの手配を依頼した。
「アスカ達は静岡、たぶん伊豆ね。静岡県警に支援要請。現場指揮、日向君、お願い。」
「はっ!!」
「さあてえ。ひっさしぶりに大騒ぎやらかすわよお。加持い〜、覚悟はいいわねえ。」
「ぶわああっくしょーいい!!」
盛大なくしゃみが、47Fの総監室から聞こえた。
ぴちゃん。ぽた。
冷たい感触に目が覚める。頭にまだ、もやがかかっているようだ。
パネルトラックに乗ったとたん、ツバサに向かって銃を突き付けられた。左右から腕を取られ注射をされた。
強い睡眠剤だったようだ。その後は、泣いているツバサの声だけが聞こえていたような気がする。
「ツバサ、ツバサはっ!」
上半身を起こす。軟らかなマットに、天井以外すべて埋め尽くされた部屋だった。
その天井から水が漏れて顔に落ちたのか。
「ここよ、ママ。」
ツバサの声に振向く。ツバサは椅子に背中合わせに縛り付けられていて、足かせをはめられている。
「やっと目が覚めたね。心配しちゃった。」
「なにかされなかった?」
「すこしね、血を採られた。ママのも採ってたよ。わあわあ泣いてやったわ。」
その時の騒ぎを想像して、口元が緩んでしまうアスカ。
しかし、抹消血を採られたとなると、事は面倒だ。そのデータを破棄しなくてはならない。
さあて、どうしようかな。
「あ、ママが好戦的な顔になってる。」
「ツバサ。今日は何にも我慢しなくていいからねえ・・・・。」
「ほんと?」
肯くアスカ。
ツバサとアスカ。そっくりな母娘が、同じ笑いをにやりと浮かべた。
さて、その頃シンジは、ようとして進まない捜査に、業を煮やしていた。
散々悩んだ挙げ句に、マンションに戻ってきた。
ツバサが生まれてからのこの5年間、本当に幸せだった。それは、親子3人だけで水入らずで生活してきたからだった。
自分達の幸せな生活は、ある人達の寂しさの上に成り立っている。それがわかっていた。
だが、今この瞬間の幸せをかけらも失いたくなかったのだった。悪夢のような最初の1年間をおぼえていた。
「わたしたちにとって、時間は意味を成さない。」
そう慰めてくれた女の子がいた。それに甘えていたのだ。
シンジは部屋の四隅に貼られている御札をはがした。神棚の盛り塩をシンクに流し、玄関の上の大きな札をはずした。
そして、大きな声で心から叫んだ。
「みんな、でてきてよーっ!!」
シーンと、静まり返った部屋の中。
もう一度。
「みんな、でてきてよーっ!!」
シーンとしたままだ。
その時、ふと心の隅に圧迫感を感じたシンジは家の外を見た。
息を大きく呑んだ。
真っ青に晴れ渡った、雲一つ無い青空に、黒い渦巻きが見えた。
その真っ黒な渦は、ぐんぐん大きくなっていく、ぴしっ、ぴしっとその中心に稲光が見える。
ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお。
低い地鳴りのような音が聞こえる。共鳴を始める家中のグラス。
ちりちりちりちりちり・・・・・・。
「き、来たんだ・・・・・・・・。」
恐ろしさに身が竦む。真っ黒な雲は今や全天を覆い尽くし、激しい雨、風がルーフバルコニーの向こうの桜の木を、
その太い幹ごと揺さ振り、轟々とうなる激しい風は、緑の葉をつけた桜の枝を思うさまなぶるように揺さ振っていた。
ぴしゃーーーーーーーっ!!
目も眩むような落雷がその桜の木に落ちて、ばりばりと激しく幹を引き裂いた。
ばばっ、どどどーーーーーん!!
同時に耳をつんざくような落雷の爆音、窓ガラスが粉々に砕け、シンジを襲う。
頭を抱え、思わずシンジは床に伏せた。
ふと、頭から手を放す。
甘い、紅茶の香り。ビスケットの香ばしい匂い。
笑いさざめく声。おだやかな、小鳥の囀り。
あれ?
目を開けると、すぐ前のカーペットに、レースのカーテンの影が揺らいでいた。
「久しぶりだな、シンジ。嫁は元気か。」
怪しい黒目がねのおやじが、シンジと窓の間に座っていた。
「とうさん・・・。」
空は、何事も無く晴れ渡り、桜の樹も、窓ガラスもそのままであった。
「ほらあなた、シンジが怯えちゃってるじゃないの。いたずらが過ぎるとまた嫌われちゃいますよ。」
ユイが、ゲンドウに寄り添うようにしながらたしなめる。
「い、いや。悪気はないんだ。頼むから、一目だけ孫を見せてくれんか。」
「シンジ君、アスカはまだ仕事ちゅうかい?いつもどってくるんだ?」
「まあ、あなた。2人の家はここにしかないんですから、そんなの焦らなくても。」
アスカの両親もいっしょであった。
「ごめん、こんな時ばかり呼び付けて。みんなが寂しいの知ってるのに甘えて・・・。でも、どうしても
助けが要るんだ。父さん、母さん!お義父さん、お義母さん!アスカとツバサが誘拐されたんだ!!」
「なんだって!!」
全員が凶悪としかいえない顔になって立ち上がった。こっ、こわっ!!
・第七話「蒸発した水は雨になって戻る」 さあ、次はこのお話の完結編だ。
さて、いよいよお待たせのゴースト軍団が出てきました・・・。がミサトも張り切ってるし。
第一、アスカとツバサが全然めげてないじゃん。悪の組織ってそろばんあわないんじゃあない?
人間やっぱ地道に生きた方がいいんとちゃいまっか?って気になってくるよなあ。
さあ、次回、「雨は集まって濁流となり全てを洗い流す」長いタイトルだなあ。
大暴れだぞお!!お楽しみに!