連続更新20回記念 :アスカ!25時番外編
江戸の旋風 アスカ親分Go !!
「てえへんだ、てえへんだっ!!」
三下のトウジが駆け込んできた。
「なにいっ、そりゃてえへんだっ!シンジッ、行くよ!」
「落ち着いてください、お嬢さん。まだなにもきいてねっすよ。」
シンジがいうと、ぐっと詰まったアスカお嬢は少し顔を赤くして言った、
「わ、わかってらい!やいシンジ!
だから手前はいつまで立っても三下なんでえっ!こういう時は走りながら考えるのが俺達の仕事よっ。」
「負けず嫌いなんだから。」
末っ子のツバサがぼそっとつぶやく・・・。
「先代が生きていてくれたらねえ。」
壁にかかった先代、銭形ゲンドウの写真を拝む、おかみのユイ。
「ええいっ!五月蝿い連中だねっ。」
脱兎のごとく外に走り出すアスカ。慌ててトウジとシンジが後を追う。
「場所はどこなのっ!」
「へい、神田明神の向こう側、お堀横の3本目で!」
今で言うポニーテールを揺らしながら、しりしょっぱりで走り抜けるアスカに近所の人たちの声援が飛ぶ。
「お、アスカちゃん捕物かいっ!がんばんだよっ!」
「今日こそは手柄立てるんだよっ。」
この声援を聞く限りあまり手柄を立てている様ではない。が皆に大変好かれてはいるようだ。
銭形アスカ。3代前の御先祖はあの有名な明神下の銭形親分である。
そして先代はかの有名な落しの銭形ゲンドウ。どんな叩きに掛けても口を割らない大悪人も、
ゲンドウ親分がにやりと笑うだけで震え上がって口を割ったという伝説上の人だ。
そして、その跡を継いだのが、この銭形アスカ親分。赤ん坊の頃明神様に捨てられていたのを
ゲンドウに拾われたのだ。開港以来増えた外国人の子を宿したどこかの娘が、密かに産み落として捨てたに違いなかった。
ゲンドウはその赤ん坊を連れ帰りユイと二人で大事に育て上げた。芳紀まさに17歳、花も恥じらう乙女親分である。
しかしこの業界甘いものではない。まして手下は頼りないシンジとトウジ。この二人もゲンドウが拾ってきた子である。
何故女のアスカが親分なのか。それは、ゲンドウの葬式会場で、
「親っさんのあとは、このアタシが立派に継いでみせます!!」
と、他ならぬアスカ自身が誓ったから、である。言い出したら絶対後には引かない事を、トウジもシンジも、その身体と
ミトコンドリアが知り尽くしていたから、否も応も無かったのであった。
そのまま三下の地位もめでたく確定した。(T0T)る〜〜
現場到着。
被害者は既に掘割から引き上げられ、型通りムシロをかけられて横たわっていた。
さっと、ムシロをめくりあげるアスカ。とたんに真っ青になって、うえ〜という顔になる。
あまりにも被害者の顔、苦悶の表情が陰惨なものだったからである。ぐっと朝ご飯が込み上げてくる。
「だめ。シンジ、あとたのむわ・・・・・。」
「えー、またなの〜。」
被害者は唇からイカの足をまだ突き出していた。シンジの鼻には酒の匂いがぷんぷん匂った。
「酒を飲んで泥酔、足を滑らせて堀に落ち、何かにひっかかって浮かび上がれず、苦悶の表情で溺死、というところかなあ。」
「うん、いい推理だなあ。シンジ君。」
「あっ、これは加持の旦那。おそれいりやす。」
「ま、そんなとこだろうな。服装から見て絹糸問屋の旦那衆だな。ほら、これは鉄の下駄だ。それで浮かべなかったんだな。」
「何でまた、鉄下駄なんかを。」
「ダイエットとやらをやってたんやないかあ?」
と、トウジ。
「おまえ、江戸生まれの江戸育ちなのになんで関西弁なの?」
思わず尋ねる加持。
「まあいい。昔元禄の頃は景気のいい旦那衆は、イキとかスイとかいってこんな真似をしたんだよ。」
「へええ〜。開港以来確かに絹糸相場はうなぎ上り・・・。」
「下駄の引き出しから白ちりめんを出して足を拭くとか、冬でも寒くない様に湯を入れるとかな。」
「あ、その鉄下駄かァ。それが命取りになったわけですね。さすがは加持の旦那。」
「ちょっと、まったああああっ!!」
乙女親分アスカが、大声で叫んだ!
「加持の旦那。そんな大金持が懐に一文も持っていないのは何故でございやしょう?」
「そ、そうなの? じゃ、たぶん財布だけ堀に落ちたんじゃねえかな。」
「では、そんな旦那が共の一人もつれずにこの神田本郷界隈をふらふらと?」
「うっ。そ、それは・・・。」
確かにここは昼は参内の客も多いが、夜は本郷通りの「らぶほてる」に人目を忍ぶ二人連れが入るだけ・・・。
「じゃあ、アスカはこれは殺しだとでも言うの?」
「あたりまえよ!」
「証拠は?下手人は?」
「ばっかねえ、それを探すのがあんた達の仕事じゃないの。親分は推理よ、頭脳労働よ!」
「何や思い付きかいな・・・。」
ばきっ!! 吹っ飛ぶトウジ。
「シンジ!加地様!なんか質問は?」
「は、は、は、ありません。ありません。」
「お、おれもないよ・・・・。」
こうしても南町奉行所あげての捜索が開始された。
「はああああ、つかれた。今日も無駄足ばかりだったなあ。」
帰ってくるなりばったりと倒れるシンジとトウジ。冷たいお絞りを絞ってくるツバサ。
「はいどうぞ。」
「おっ、こいつぁーありがてぇ。ツバサ、ありがとよっ。」
礼を言う二人。さっそく顔をひとふき、生き返る気分だ。
「ねえ、お兄ちゃん達はどんな調べをしているの?」
「どうってなあ。土地勘のある、前科者をしらみつぶしだなあ。それが基本よ。」
「前科者ねえ。でもこういう手口のバラシってのは今まで無かったんでしょ。」
「ああ、あの河内屋っていう絹問屋も一人でふらふら共も連れずに歩くのが好きって言うかわりもんで。」
「ふらーっと来たんじゃねえのかなあ。」
「ねえ、河内屋って大阪の人なの?」
「あ?ああ、そうだよ。船場の大商人で・・・。」
「そっ、それよっ!!」
後ろでアスカが叫んだ!もうひとっぷろ浴びたらしい、浴衣をバサッと羽織って、男のように下帯を閉めている。
湯上がりの上気した桃色の肌。豊かな胸が半分見えそう・・・。
「ぶぶぶっ!!」
「アスカ!なんてかっこうしてるんだよっ!!」
「俺達が汗水たらして働いてる時に手前は風呂浴びてたんかい〜〜。」
「それどこじゃない!大阪の誰も知り合いのいないはずの商人がなんでここに鉄下駄はいてくるのよ!」
「え?」
「あんなもん、誰かに見せびらかすんじゃなきゃ、重いだけじゃないのさっ!知り合いがここにいるのよっ。」
「あっ、そうか!大阪から最近越してきた人を探せばいいんだ!」
「いくよっ!」
「がってんだっ。」
「まって、まってっ!!お姉ちゃん、いくらなんでもその格好は駄目ええっ!!」
ツバサがアスカの足にしがみついて必死で叫んだ。
「船宿 赤木」
柳の並木が堀端に並んでいる。そこにひっそりとある船宿。
女将が大阪から流れてきたばかりという事くらいしか周囲の住民達も知らない。
しかし、夜な夜な怪しげな香りが漂ったり、窓越しに火花が散るのが見えたりする。
「姉さん、どうも南の連中がかぎまわっているみたいですぅ〜。」
心配気に、若い娘が話し掛ける。
「そう。証拠も何も無いのに。ご苦労な事ね。」
泣きボクロの年かさの女が答える。何故か金髪だ。
「だいじょうぶかな〜。」
「この辺仕切ってるのは、アスカとか言うまだ尻の青い小娘だって言うじゃないの。何てことはないわ。」
どかっどかっ。
「あら、ねずみかしら。」
「あ、あ、あ、あのとしま〜〜。」
「ア、アスカッ、落ち着いてっ。」
「そや!いま大事な所やんか。」
屋根裏で必死になってアスカを押さえつけているシンジとトウジ。
「でも、おかげで研究費が出たし、まあ、これで私たちも元の時代に帰れるかもしれないわ。」
「こんな時代にいつまでもいたくないですぅ〜。」
「あんたがタイムマシンの目盛りを間違えた上にこわしたんでしょっ!文句言わないっ。」
「壊したのは、私じゃなくてミサトさんですぅ〜。」
「そうだったわね、その上、酔っ払って機械をひっぱたいた時のショックで自分だけ現代にリープして!!」
「許せないですよね〜。」
「な、何の話をしてるのかしら。」
「さあ、さっぱりわからないけど。」
二人の女は分厚い財布を取り出すと中身を数えはじめた。
「あっ、あれは絹問屋の手代が言ってた、西陣織のど派手な財布ってやつじゃない?」
「そや!金糸銀糸に錦糸を取り混ぜて、まっかっかの金魚の模様・・・。」
「一目見たらわかるってやつだね。でもひどいセンスだな・・・。」
「ま、まあいいわ。ふんじばるわよ!」
アスカは十手を取り出すと、シンジを押しのけて前へ出ようとした。
「あっ、アスカ待って僕まだ体勢が。」
「えーい、邪魔だってば!」
「センセ、其処、危ないがなっ。」
「きゃっ!どどどどこにぎってんのよっ!」
「うわああ、アスカごめん!」
「きゃあああっ!」
ばきばきばきばき!ぐわしゃっ!
どさどさどさ。
3人は折り重なって赤木屋の二人の前に落ちていった。
ぱっと体勢を立て直してアスカは叫んだ。
「赤木屋リツコ、赤木屋マヤっ!絹糸問屋河内屋殺害の件に付き調べたき儀、これありっ!」
「し、神妙にお縄につけええっ!」
尻馬に乗ってシンジも言い放つ。
「シンジ君!?」
「アスカちゃん!?」
急に知り合いが天井から降ってきた。リツコとマヤは呆気に取られて叫ぶ。
「へ?」
いわれた当の二人は何の事かと一瞬固まる。
そのすきに、外に走り出たトウジが呼び子を吹き鳴らす。
ぴいいいいいいいいいっ! ぴいいいいいいいいいっ!
あっという間に取り縄を掛けられるリツコとマヤ。
「いたたたたたた。」
「乱暴しないでよう!」
「何いってんのよ、人殺ししてそのまま済むわけ無いでしょう!?」
「ひ、ひとごろしい?」
「わたしたちそんなことしてないわよお。」
「だまれ!人殺しはみんなそう言うんだ!」
決め付けるアスカ。
「でも、ちょっとだけ聞いてあげる。いいよねシンジ。」
「うん、もうしばってあるし。」
二人は話しはじめた。
「ごめんよ・・・。」
「あ、いらっしゃいませ。」
愛想良く出迎えるマヤ。
「センパイッ、このまえのお客が来ましたっ。」
「うんっ、逃がすんじゃないわよ。また有り金全部うちで飲んでいかせるのよっ!」
大阪でタイムマシンから抛っぽり出されたあと、必死で働いて店を構えたが、大借金を背負わされて江戸に逃げてきた。
二人は必死であった。今日の売り上げが無ければ明日は仕入れも出来ないのだ。
「今日はもっとかせぐわよ〜〜〜。大丈夫。この自動摂取マシーン”早食いくん”があれば・・・。」
「はい、なんになさいますかあ。」
「そうですな。イカ刺しと、酒を貰いまひょか。」
「はいっ。イカと酒でーす。」
「ふっふっふっ。姉さん、いつ見ても、こいつぁー鄙にもまれなという美形でんなあ。」
「あらァ、お客さん難波の方の方だったかしら、濃いいお方です事。」
「姉さん、濃いいのがお好きでっか。」
「もう!こちら私のタイプ・・・。もう、どうにでもして〜ん。」
あのお嬢様タイプのマヤが・・・・だいぶ大阪で苦労にもまれたらしい。
上手くあしらいながらまずはお酒。どーん!
「な、なんやこれは。一升瓶やないか!」
「熱燗一本でしょ。うちはこれで大化の改新以来やってますけど。」
「そんな時代に江戸があるかいな。」
「あ、、ん。おきゃくさん。弱い方、マヤ・・きらいっ。」
「でええへへへへへ。いやいやそやないそやない。ちょっとびっくりしただけや。何本でも持ってきなはれ。」
「ああ〜〜〜ん、マヤ太っ腹が好きぃ〜〜。だめに・な・っちゃい・そ。あはん。」
とんでもない事を言っている。 せ、清純派のマヤがあああ。(T-T)
たちまち並ぶ一升瓶。マヤもかなり飲んでいる。河内屋もグテングテンだ。
「はい、イカのお作りでえす。」
「はいはい、こんなもんよりこれ見てえな。」
「なに?鉄下駄ァ。お客さん身体鍛えてんの?」
「これはな、なかにおゆがはいってて、冬でも寒くないんや。」
「きゃー、面白い。ねえ、マヤにもぉ。ほんと、あったかあい。」
よたよたと歩き回ったマヤが、こけて河内屋の膝に転がり込む。
得意の絶頂の河内屋が机をバンバンと叩いたとたん、イカのお皿についていたボタンに手が。
「あっ、そこを叩いたら駄目っ!!」
勝手場からリツコガ叫んだが遅かった。
ぴーっ、がたん。
全自動摂取マシーン「早食いくん」のスイッチが作動し、むっくり立ち上がったイカが、がちゃがちゃと
音を立てて河内屋に躍りかかる。
「ぐ、ぐわっ、こりゃなんやっ!」
細い手足で河内屋の口を押し広げると、頭から河内屋の口の中へ潜り込んでいく。
「げぼげぼげぼ・・・だれか・・・げぼげぼげぼ。」
あまりの恐怖に抱き合っているリツコとマヤ。
そして最後のイカの足がちゅるん、と口の中に消えとき、河内屋はすっかり事切れていたのであった。
事の露見を恐れたリツコとマヤは、夜もふけた頃、お堀に河内屋を捨てた。
これが事件の真相であったのだ。
「そ、それじゃ、その機械の誤作動させたのがいけないわけじゃん。」
「わざとじゃ、なかったんですう〜。」
「聞くとこに寄れば、河内屋には妻子もいないしかなり悪どい商売やって人々を泣かしてたそうだよ。」
「もう!またすぐシンジはそういう事言う!そういう事はお白州で・・。」
「どのくらいの刑になるんですか。」
あそるあそる尋ねるマヤ。
「まあ、殺しは殺しだし。ねこばばのほうも、むしろ罪は重いから。」
「ひえーん。」
「ま、一説には3両で首が飛ぶと。」
「いくらはいってたの?」
「現金20両と、両替商の切手が120両・・・。」
「あ、だめだわ。死罪確定。」
「びえ〜ん!!こんなとこで死ぬのはいやだあー。」
二人は泣き喚いた。
そこに呼び子で集まってきた同心加持、取り方の面々が入ってきた。
「お手柄だ!アスカ親分!これでおめえんとこもまた・・・!!」
「この人たち、わざと殺したんじゃないんです。そのあたりお手加減を。」
「わかったよ。おめえの優しいとこは、俺やシンジがよおく知ってらあな。遠山様には俺から、な。」
「ありがとうごぜえやす。」
「ど、どのくらい軽くなるの、加地くんっ!」
必死のリツコ。
「へ?俺はおめえのことなんざしらねえぞ。そうさな、鋸引きがただの磔にして貰えるかも・・・。」
「うわあああーん。」
二人は引き立てられていった。
「なーんかなあ。後味悪かったなあ。」
座敷に寝転がって足で壁をごりごりやっているアスカ。
そのとなりで爪を切っているシンジ。
「店の地下からもなんか分けのわかんない機械がいっぱい出てきたけど、なんだったんだろうね。」
「以外とあの人たちが言っていた、未来から来たってのも嘘じゃないかもね。」
ころんと起き上がってアスカが言う。
「てえへんだてえへんだ!!」
かわら版屋のケンスケが飛び込んできた。
「なによっ!!」
「こ、このあいだの河内屋殺しの下手人、お仕置き場で消えちまった!」
「えええーっ!」
「引き立てられた所に、空中から変な乗りもんが現れて、二人を攫って飛んで宙で消えちまったんだ。」
「なによっ、ミサト!遅いじゃないのっ。もうすこしではりつけだったのよっ!!」
「ごめんごめん。てへへへへ。天才赤木博士がいないとタイムマシンなんて作れなくてさ。」
「あああ〜よかったああ〜。おかあさーん。」
「この貸しは高いからねええっ!」
「ああ〜、おとうさあん。生きて会える〜。」
ぼろぼろ泣いたり、怒ったり喚いたり謝ったり忙しい。
「もしかしたら、ほんとに未来人だったのかも。」
シンジがぽつりと言った。
「そんなわけないでしょ。ばあか!」
「江戸の旋風・アスカ親分Go!!」/おしまい
記念と言いながらこんなどうしよーも無い短編を・・・。
ごめんよお。久しぶりに時代劇で遊びたかったんだよお!
こめどころ
花も恥じらう乙女親分・・・・・・・・うーん、・・・・・・・・・・いい・・・・・・・・・・・・・
どーしようも無い短編なんて、とんでもない。
なんというかこう、アスカ様ってどんな舞台でも元気でいいっすねぇ〜
そして例によって頼りないながらも アスカ様の後ろをいっしょうけんめい追いかけるシンジ君。
いーじゃあーりませんか!、このままお江戸LASとかそういうのって無いの?、ねぇねぇ。
それにしても某マッドとその助手、誤動作でって・・・・どないやっちゅーねん (^^;;
タイミング良く現代に帰れたというものの、お江戸のアスカ様とシンジ君+が気になって
また江戸に舞い戻ってきたりとか、しないの?、ねぇねぇ〜。
などとおねだりばっかりしてしまいつつ、20日連続更新記念作品、これにて閉幕でありますっ!