アスカ!25

第七話 中編 「りんごの木を植える時」

こめどころ





東京が怪獣の脅威にひっくり返っているちょうどその時。シンジは新潟寺泊港にいた。


広域特捜の捜査官には広範な指示命令権が地方警察に対して認められている。

この寺泊でシンジは、新潟の海岸線一帯に「青」の犯罪ルートを探り壊滅の手がかりを掴むためにこの1年間活動していた。

新潟の海岸線は長く岩陰も多い。また住宅から離れている事と海岸線が防波堤に遮られているため人目につきにくい。

特に夜間は海岸は真っ暗になり、秘密活動にはもってこいだ。「青」はこことウラジオストックから北の沿海州をルートとして

おもに人体パーツ売買に関わる犯罪行為を生業とする組織である。また、ウラルマフィアは主に新合成麻薬と武器類の密売を

主たる生業としていて、犯罪集団同士で互いに協力関係にあった。ゲンドウ達の情報でこの2大組識が完全な合併関係に入る

可能性を知った広域特捜はその正確な情報を獲得し、日本における組織の全容を早急に掴む必要に迫られていた。



寺泊から北へ約20km。シンジはこの海沿いの原生林地帯に目を付けていた。

この原野は40年前は普通に人間が生活する豊かな土地であり自然の良港であった。しかし前世紀末、この平凡な漁村に降って湧いた

原子力発電所の建設の話。事が公に成る前に周辺地区の全ての山林は買い押さえられていた。中心部から半径数キロに及ぶ範囲は

あっという間に無人になった。この集落は孤立し、周辺の町へ出入りする唯一の道路はたちまち周囲を原生林に覆われた。

村民はやむなく村を捨てた。孤立集落が単独で生きていける時代ではなかったのである。

ところが電力会社と地元建設会社が勇んで建設に取り掛かろうとしたとたん、隣りの大きな都市からベッドタウンに原発を作られては

困るという反対運動が巻き起こり計画は頓挫。結局十数年の歳月を投じながら発電所は立たなかった。その地区はうち捨てられたまま

深い森の中に沈んだのである。半径中数キロの無人の地。ここに何かが有りそうだ、とシンジは思ったのだった。


「青の痕跡、密輸出輸入の差し押さえは従来柏崎、直江津、新潟などの港湾地区で行われた。しかし青の経済規模から考えると

それら全てをあわせても2〜30億円分にしかならない。彼らは種々の情報を総合すると約2000億からの利益を日本で上げているはずだ。

それもおそらくその7割が新潟から出入りしているはず。



その糸口がばらばらとほぐれ出したのは伊豆沖の事件からだった。


「シンジ君、寺泊に大量の重油が流れているとの通報がはいってきたぞ。」


シンジと共にこのヤマを担当しているアオバがある朝話掛けてきた。


「どこかで座礁でも?」

「いや、そんな報告はない。タンカーの不法洗浄水かとも思ったのだが、通過も含めここ暫くはバラ積み船ばかりだ。」

「報告の無い重油?浮遊物は何か上がったんですか?」

「あがったさ。これを見てくれ。今日午後、大量のクラゲが野積浜にな。」

「クラゲですって?」

「これがそのクラゲだ。ついてこいよ。」


アオバは剖検室へシンジを連れて行く。


「見てくれ。」


黒いビニール袋をひっくり返すと中からどろりと不透明な茶色・・錆色に近い固まりが滑り出た。」


「これは、クラゲですか・・・。いや、ちがう。酸素含有CPDコロイドが砂や砂鉄を撒き込んで酸化し、不透明になっているんだ。」

「御名答だ。」


アオバは両手をその固まりの中に突っ込んで、ばりばりと引き裂いた。中から現れたのは女性の右手関節であった。

もう一つを同じように引き裂く。今度は腎臓が現れる。次は心臓・・・。


「回収されたのは、全部で2300点。約50億円分の人体パーツだ。」

「過去数年分の押収物件に匹敵しますね。」

「7年前に君とアスカが潰した青の貨物船事件以来青の行動は表向き目立たないものになっていたが、不正に手に入れても

生きたいという需要があるかぎり、この商売はなくならない。まして表向き移植が正規医療として禁止されている国があればな。」


アオバはやりきれないという顔をした。最後の心臓は間違いなく幼児のものだったからだ。


「アオバさん、伊豆沖で彼らは潜水艦を使っていましたね。貨物船から潜水艦輸送に切り替えたという事は。」

「なるほど、ティニーランドの時も逃走に潜水艦を用意していたな。しかし、ディーゼル潜水艦は浮上換気の必要がある。

日本では潜水艦は異常に目立つぞ。」

「あります!周囲がまったく人里から離れている場所が。旧原子力発電所の・・・・。」

「あそこか!確かに工事をしても目立たないし、候補としての可能性は高いな。」

「ちょうど来週から捜査に入る予定で、県警には人数の手配を依頼してあります。増員をお願いしましょう。」


ゲンドウからは、青とウラルマフィアが、ツバサとアスカを狙っている理由も聞かされているシンジだった。

さっき見た人体のパーツ。幼児のパーツを見た瞬間、シンジは狂暴な怒りが身体中を貫くのを感じた。


(「絶対に許せない。自己の利益のためにあらゆる非合法な手段で人体を切り刻む「青」の組織。」)



その時、剖検室に誰かが駆け込んできた。


「アオバさん、イカリさん!東京が大変だ。怪獣が出たんだと!」

「へっ??」

「怪獣〜?」


一気にボルテージが下がる。悪い冗談はやめてほしいよ、という感じ。


「ほんとだって」


駆け込んできた県警の刑事が、剖検室のモニターにTV回線をつなぐ。


「ほれ、見れ。」


そこに映し出されたのは、紛れも無く怪獣。
夜空をバックに異様な姿をさらけ出し、何本もの投光器の光の舞台の中、晴海埠頭から今まさに上陸した瞬間だった。


「ふわあああ。本当だ、怪獣だ。」

「アオバさん、大変な事態なんでしょうけど、何か力が抜けますね。」

「まったくだ・・・。これで火でも噴いたら正義の怪獣や、ナントカマンが飛んできそうだな。」

「これは、何かのクローンなんでしょうか。」

「いわゆる、キマイラというやつか。それとも何らかの遺伝子操作を行ったものか・・・。」

「ここまで巨大化させる培養技術はすさまじいですね。」

「とにかく、本庁と連絡を取ってみよう。」

「ええ。」






格闘訓練を終わったアスカとツバサは、屋上ににひっくり返って夜空を見上げていた。

夜空は、排気ガスや粉塵、煤煙を出すものが極端に減ったため、また光公害対策のために
町は明るいが上空へ抜ける光は規制が厳しくなり、明治時代に匹敵する所まで来ていた。


「きれいなお星様ね。」

「うん。」

「しかし、その姿になるとほんとに昔の自分と戦ってるみたいで変な気分よ。」

「巻毛だけ違うけどね。」

「それは、キョウコおばあちゃんのお母さんの遺伝かもしれないわね。」

「ひいおばあちゃん、巻毛だったの?」

「そうみたいよ。金髪ではなかったそうだけど。」

「ふーん、ママの金髪は誰の遺伝かしらね。おじいちゃんも金髪じゃないしね。」

「ママは12,3までは明るい赤毛だったわ。その後金髪になっていったの。」

「そうなの。ずっと金髪だったのかと思ってた。」

「ふつうは、金髪から茶色に変わったり、色素が濃くなるものなのにね。」

「パパに似たとこある?私。」


ちょっと心配になったツバサが尋ねる。


「あるわよ。お人好しで、見て見ぬふりが出来なくて、優しい所。大事な人を必死で守ろうとする所。いいとこばっかり貰ったわね。」

「えへへへっへ。そかな。」


頬を染めるツバサ。


「パパが大好きなのね。この姿を見せたら、パパは大喜びするかもしれないわね。」


からかうように微笑むアスカ。ツバサは唇を突き出してすねたように答える。


「だめよ!あとの楽しみが無くなっちゃうじゃない。それに、これじゃパパと一緒にお風呂は入れないし。」


そう言いながら真っ赤になるツバサを見て、アスカはケラケラと笑った。


「はいはい、可愛いツバサちゃん。このことはままと二人だけの秘密にしておきましょうね。」

「うんっ!金髪は魔女、の家系だなんていったら、パパはひっくり返っちゃうもんね。」








遠くで怪獣の鳴き声が聞こえるだけの静かな夜だった。







アスカ!25時/「りんごの木を植える時」/つづく



アスカ:せっかくいいシーンなのに決まらないわね。怪獣なんか出して収集つくの?

こめどころ:さあ?

ツバサ:私、しーらないっと!

シンジ:僕は新潟で動き取れなくなってるし。

ゲンドウ:ワシらの出番は、どうした。

レイ:ちゃんと出さないと承知しない・・・・。首・・・折れやすいもの・・・。

こめどころ:ひ、ひえ〜い。

加持:この霊魂集団を何とかしてくれ・・・壊れていく、僕の世界が。

ミサト:そんなにたいした事ないって。酒飲めばみんなゆらゆらするじゃないの・・・。

リツコ:あんたは黙ってなさい!

誠:俺も知らんからね。

こめどころ:誠〜、リレー小説にしない?

全員:し・ま・せ・ん!!

こめどころ:なまんだぶなまんだぶ〜。






 

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