スーパーウーマン、アスカの娘、ツバサ=フィオ=イカリ。

今日も可愛くて明るいアスカママと一緒でご機嫌。

優しくて強いパパ、碇シンジは、娘には大甘の子煩悩。

素敵なファミリー碇一家はどこでも羨望の的!

しかし、この一家には大きな秘密が隠されていたのです・・・。

そう、この家の2人の女性は、娘もママも、天才でその上魔女だった、のです。(笑)



お雛祭り記念SS

アスカ!25時

第八話 -お雛Party-

こめどころ






「ねえ、今日保育園で、お雛様をやったんだよ。」


アスカに向かって、ツバサはにこにこして言った。一袋づつ貰った雛あられをしっかり握りしめている。


「ああ、今度の日曜日はお雛様だったわねえ。また翼くんと二人でお内裏様とお雛様をやったの?」


「うんっ!」


ちょっと照れくさそうに肯くツバサ。翼くんはツバサのお気に入りの男の子である。

名前が一緒なので先生達が面白がって「翼くんとツバサちゃん」と呼んで、ペアの行事はいつも

二人にお鉢が回ってくるのだ。


アスカとツバサは、帰りがけに一抱えもの桃の枝と菜の花を買い込んだ。甘酒と雛あられと菱餅と。

家に帰りつくと、押し入れからお雛様を出して飾り付ける。内裏様、お雛様、右大臣、左大臣、三人官女、

金の屏風、牛車、たんす、鏡、ぼんぼり、などの細かい家具。


「このお雛様は、冬月副司令に頂いたんだったわねえ・・・。」


温和で優しいアスカとシンジのかつての上官は、数年前に亡くなっていた。誰よりもツバサの誕生を喜んでくれた老人は、

天涯孤独のアスカ達の親代わりとして、ひな人形や、5月人形や、こいのぼりをその度に抱えて持ってきてくれた。

まるで、本当の祖父のようによくしてくれた。


思い出に浸って少ししんみりしていたアスカにツバサが刀の刺し方や、冠の付け方を尋ねてくる。


(「冬月さん。私たち元気でやってますから。」)


心の中でつぶやく。


一時間以上も奮闘した挙げ句、やっと赤い毛せんの上に見事にお雛様が飾られた。


「わーい!わーい!おひなさまぁ!」


走り回るツバサ。こうしているとまったく普通の子供だ。あの、天才のツバサはこんな時は眠ってしまっているのだろうか。

アスカは不思議に思う事がある。


「今度の日曜日も皆でお雛祭りをするの?」

「うん!」


同じマンションや、同じ子供会の中にお雛様を持っているお友達が数人いる。

そのお雛様飾りを女の子達みんなで順番にまわって、お祭りをするのがツバサの3日の毎年の恒例行事である。


「だって、みんなだってお雛様を見せたいじゃないの!」


というのがツバサの主張である。しかし、今年はちょっといつもと変わっていた。


「あのね、女の子の他に、翼くんと、大くんと、ポーくんが来るの。」

「へー、男の子がよく来てくれたわね!」

「命令なの!」


ツバサは嬉しそうに言った。どうもこの3人がツバサのボーイフレンド兼、子分らしい。

女の子達の間に挟まって肩身を狭そうにしている3人の、情けない顔を連想してアスカは吹き出した。

両親と弟を一度に失い、あまり子供らしい事も出来なかった自分の子供時代の事を考える。

それだけにツバサには出来るだけの事はやってやりたかった。




日曜日。女の子達10人と、男の子3人が碇家に集合した。

昨日の夜遅くまで色々の菓子や料理を作りつづけていたツバサとアスカはちょっとねむそうだ。

女の子達は色とりどりの着物を着ている。

男の子達は、いつもと違う女の子達の様子を見て、どぎまぎしているのがわかる。


「ねえねえ、みてみてシンジ!可愛いったらないの。」

「ほんとだ。やっぱりツバサは可愛いなあ。」

「親ばか!そういう事いわないの。みんな可愛いんだから。そういうのは私と二人っきりの時に言うのよ。」

「はいはい、ごめんなさい。」

「ね、あの男の子たち。まるで小金井署の3バカって言われてた頃のあなたみたいね。」

「あーっ、そういう事いうか?ふつう。」


いまやケンスケは、科学警察にその人ありと歌われるまでの名技術者になっているし、

トウジは退職して大工になり、多摩マイホームセンターの棟梁兼社長である。



和気あいあいとパーティーは進んでいたが、大きなケーキが出てきた時一悶着が起こった。


「このケーキ、男の子の方ばっかり大きいじゃないの、ちゃんと切りなさいよね!」


切り分けていた男の子の一人が言い返す。


「なんだよ!着物が汚れるからあんたが切りなさいって言ったの自分だろ!」

「今日は、女の子のお祭りなんだからね!お情けで呼んでもらっておいて威張らないでよ!」

「なんだ!ケーキくらいでけちけちした事言うなよ。俺達だって付き合いで来てんだぞ!」


「あれれ、けんかかな。あれは、ツバサの声だな。」

「まあ、あのくらいはいいでしょ。でも5つくらいでもう男の子は「俺」なんて言うのね。かわいいっ!」


碇夫妻はまったく動じない。しかしケンカの方はエスカレートしていくようだぞ。


「なによっ、翼くんなんて大嫌い!」

「俺だってツバサちゃんなんて大嫌いだよっ!帰る!さよならっ。」


だだだだだっ!


シンジとアスカの間を駆け抜けていく翼。

ばたん!

ドアが閉まる。追ってきたツバサの顔の前で。


「う、う、う・・・。」


あれ・・・?


「うわあああ〜ん!翼くんの馬鹿ァ!!」


「やれやれ。珍しい事。」


ため息をつくアスカ。びしょびしょの顔のツバサの顔を拭いてやりに立ち上がる。


「こうやって、いい女になっていくのよね。」


シンジはアスカの台詞に笑いをこらえて何気ない風を装ったが、「翼くん」という最初のライバルの名前をしっかり記憶した。


騒ぎが収まり、甘いものを食べ終わった子供たちは次ぎの家へと異動を開始。

3軒のお雛様を見て回るのだ。アスカとシンジも付き添いでまわる。

葵ちゃんのうちは、昔から大事にされている大きなお雛様。丁寧に修理を重ねられた、文化財級のお雛様である。

子供たちは、分からないなりに宝物のようなお雛様に相対して、本物の重みを知る。

出町さんのおうちのお雛様は、人形職人だったおじいちゃんが孫娘のために作った軟らかな顔の京風の人形。普通のお雛様と

少しずつポーズが違う。お雛様達は澄ましていないで、にこやかに微笑んでいる。

これはきっと孫娘がこんな家庭を大きくなってつくって欲しいという願いを込めて作られたのだとアスカは思う。


「いいお人形だなあ。」


アスカはつぶやく。日本にやってきてからお雛様をいろいろ見たけれどこのお人形が一番いい顔をしている。

お酒の弱いシンジが、出町さんのお父さんに飲ませれている横で、じっとお雛様を見詰めていた。


「先に行くよーっ。」


Partyが終わり、マンションへ向かって走っていく子供たち。ひらひらと着物の袖がアゲハチョウのようにパタパタとひらめく。


「ねえ、お雛様っていい習慣だね、シンジ。私日本の習慣て、優しいから好き。」

「そうだね。僕らは寂しい想いをして育ったけどそういう事が無い様にしたいな。ツバサだけでなく、子供たち皆がね。」


優しい顔でシンジは言った。


(「あ、いいなあ、この人の顔。この優しい笑い顔。」)

思わず顔を上気させるアスカであった。



「きゃーーーーっ。」

「わあああーーーーん!!」


子供たちの悲鳴!2人は猛然と駆け出した。


どこから逃げ出してきたのだろう、大きなグレートデンが、子供たちに吠え付いている。

子供たちはマンションの小さなジャングルジムに上って、子供用のスコップや木の枝で追い払おうとしているが

グレートデン相手ではどうしようもない。犬の正面にいるのはツバサだ。きっとお友達を先に逃がしたのだろう。

しかし、こんなに人がいるところでは、魔法を使う事も出来ない。

シンジとアスカからの距離は50m、間に合わない。

とっさにシンジは隣りの煉瓦の壁を蹴り崩した。


ガシッ!ぐわしゃっ!


煉瓦を投げつけるつもりなのだろう、しかしまにあわないっ。


「わおっ!!」

犬が飛び掛かった。腕で顔を庇って倒れ伏すツバサ。


「ツバサァッ!!」


アスカの叫び声と殆ど同時に、


「うわあああああああっ!!」

どかっ!!

犬はバットで脇腹を思いきり殴りつけられて、横に倒れ、すぐに立ち直った。

「うわあああああっ!!」

果敢に一人の男の子がバットを振り回している。

その瞬間、シンジのなげた煉瓦の固まりが、矢のように犬の首筋に命中した。


ギャイーーーン!!


たまらず腹を見せてひっくり返った犬は、もがいているが、もう立ちあがれなかった。


「ツバサッ!」


アスカがツバサを抱きかかえる。


「このいぬっ!このこのっ!!」


ゲシゲシと、脇腹に追い討ちをかける。


ぎゃいんぎゃいん!


完全に戦意喪失の犬。その横で、ぜいぜいと、真っ青になって荒い息をしているのは翼くんだった。


「翼くん、ありがとう。おかげで助かったよ。」


ぽんと、肩を叩くシンジ。そのとたん、翼くんは盛大に大声で泣き始めた。


「うわああああああんん!!!うわあああああ〜〜んん!!」


呼応するようにツバサも泣き始める。


「うわあああ〜〜んん!!うわああああ〜ん!!」




「やれやれ・・・。こりゃあ、僕の負けは確定だなあ。」


シンジがぼやく。


「うふふ。かわいそうなお父さんね。」


アスカがにっこりと笑った。






もうすぐ春!!









アスカ!25時 ・第八話・ 「お雛Party/終


Mar.3.2000 公開

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